2011年4月9日土曜日

津波に強い街再建へ 有効な高地移住、課題は財政負担

東日本大震災で大きく損なわれた地域の再建議論を本格化させるため、政府は近く「復興構想会議」を設置する。防潮堤が役割を果たさなかった大津波。過去の教訓から高地へ集団移住し、被害を最小限に抑えた地区がある岩手県大船渡市はほかの地区の高地移転に向け走りだしたが、課題も見え始めている。

 「助かったのはご先祖さまのおかげ」。大船渡市中心部から十数キロ北方の入り江にある吉浜地区の女性(70)はしみじみと語った。吉浜地区にある四百数十戸のほとんどは海岸線から高さ約20メートルの県道より上に建つ。被害は行方不明者が1人、全壊・流失した家屋は4戸にとどまった。

 同市在住で郷土史研究家の木村正継さんによると、吉浜村だった明治29年、三陸地震津波が村を襲い、中心部の半数近い家屋が流失。200人以上が死亡した。村長は高地移転を指導し、住居があった低地は水田などにした。

効果は昭和8年の三陸地震津波で実証。地震後の転入者を除き、死者は4人だったという。木村さんは「確実に効果があるのは高地移転。今回も実証されたと思う」と指摘する。

 大船渡市は、被災から間もなく復興計画に着手。高地移転の実現に向け動きだした。平成5年の北海道南西沖地震での津波被害後、国が移転経費の4分の3を補助する「防災集団移転促進事業」に基づき、55戸が高地移転した北海道・奥尻島の調査を決定。3月下旬に佐藤高広・市災害復興局長ら職員2人を派遣した。

 高地移転の推進については、政府も集団移転促進事業の拡充の本格検討に入っているが、課題も浮き彫りになっている。

 国土交通省によると、浸水した市街地は約92平方キロメートルと東京・山手線内の面積の1・5倍近く。民主党は集団移転促進事業を適用しても自治体の財政や事務の負担が大きくなることを問題視。移転地の確保の困難も予想され、国交省関係者は「市外に移転地を求めれば、その自治体との交渉がスムーズにいくかどうかは疑問だ」と指摘する。

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