2011年8月31日水曜日

どじょう演説で脚光 相田みつをブーム再燃

野田佳彦新首相が民主党代表選で引用した、詩人で書家の相田みつをさん(大正13~平成3年)の作品「どじょう」が脚光を浴びている。晩年にようやく世に出たみつをさんが、自身を“泥くさい”魚になぞらえて作った詩だ。収められた作品集は急遽(きゅうきょ)、増刷が決まり、相田みつを美術館(東京・丸の内)では来館者が急増している。

 新首相は8月29日の代表選で「好きな詩に、どじょうが金魚のまねをしてもしょうがねえじゃん、というのがある」と演説。「どじょうがさ金魚のまねすることねんだよなあ」と書かれた詩は、昭和62年の第2詩集「おかげさん」に収録されている。約25万部のベストセラーで、版元のダイヤモンド社によると、演説後に注文が殺到し、8月30日に5千部の増刷を決めた。

 長男で同美術館の館長を務める相田一人(かずと)さん(55)は「熱心なファンにしか知られていない地味な作品。これを選んだことに野田さんの熱い思いを感じる。父も生きていたら喜んだと思う」と話す。8月30日には通常の1・5倍の約1500人が来館した。

 出身地の栃木県足利市を拠点に、詩と書の制作に打ち込んだみつをさんは59年、60歳で初詩集「にんげんだもの」を出版。それまでは作品がほとんど売れず、貧しい生活を送っていた。相田館長は「初詩集で世の中に知られ始めた時期に書かれた作品で、自分はどじょうだという思いがあったはず」と説明。「父は生前、『どじょうと金魚を比べても意味がない。それぞれの命を生きればいい』とよく言っていた。背景には『存在しているものはすべて本物』という仏教の思想がある」という。

 新首相については「実直で、行動で引っ張っていく方のようだ。期待しています」とエールを送った。

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